未来企業の会2月例会

平成11年2月10日(水)18:30〜22:00

 

2 イノベーションの機会 P.F.ドラッカー経営論集第10章「イノベーションの機会」をテーマにディスカッションを行った。
P.F.ドラッカー著
ダイヤモンドハーバードビジネス 1985年5-6月号
「企業家精神の根幹:体系的なイノベーションの実践」として翻訳掲載
<以下抜粋>
「イノベーションの機会」
・ 起業家精神とインベーションの関係(P191)
 成功した起業家に共通するものは、性格ではない。体系的イノベーションを行っていることである。
 起業家精神とは、会社の大きさや新しさではなく、ある種の特別の活動にかかわることばである。そしてその活動の中心にあるものが、イノベーション、すなわち事業体の経済的、社会的な能力に変化をもたらす仕事である。
・ イノベーションのための七つの機会(P192)
 <産業の内部のイノベーションの機会>
@ 予期せぬこと
 予期せぬ成功や失敗は、イノベーションの機会として、優れて実り豊である。なぜならば、競争相手が無視してくれ、あるいは敵視さえしてくれるからである。
A ギャップの存在
 技術上のギャップ・業績上のギャップ・認識のギャップなどがイノベーションの機会となる。
B ニーズの存在
C 産業の構造変
 えてして産業の構造は、あたかも神によって定められた不変のものに映る。だがそれは、一夜で変わるものであって、事実、一夜で変わってきた。この産業の構造変化が、イノベーションの機会となる
 ある産業が急速に成長するとき、たとえば一つの目安として十年に四割成長したとき、産業構造が変化する。しかもそのとき、すでに基盤を確立している会社は、自らが手にしているものを守ることに汲々とし、新規参入者の挑戦に応じようとしない。産業の構造が変化しているとき、伝統を誇るリーダー的な会社は、なぜか成長の最も急な市場を無視する。
 
 <産業の外部のイノベーションの機会>
D人口の構造変化
 産業の外部のイノベーションの機会として、最も確実なものが、人口の構造変化である。人口の構造変化には、確定したリードタイムがある。
 人口の総数、年齢構成、教育水準、職業分布、地域分布の変化がもたらすイノベーションの機会は、起業家の世界において、最も実りが大きく、かつ、最もリスクが小さい。
E認識の変化
 コップに「半分入っている」と「半分空である」とは、量的に同じである。だが、意味がまったく違う。世の認識が、「半分入っている」から「半分空である」に変わるとき、大きなイノベーションの機会が生まれる。
 認識の変化は事実を変えない。事実の意味を変える。しかも急速に変える。
F新しい知識の獲得
  歴史を変えるイノベーションには、科学技術や社会にかかわる新しい知識に基づくイノベーションが多い。それらは、起業家精神の華である。
 通常イノベーションにとって新しい知識が意味をもつようになるには、二つ以上の知識の出現を必要とする。
 コンピュータは少なくとも六つの独立した知識を必要とした。二進法・計算機の概念・三極管・記号論理学・プログラム・フィードバックの概念
 知識によるイノベーションにおいては、それが長いリードタイムと、異なる知識の結合を必要とするという二つの特質から、独特のリズム、魅力、リスクが生ずる。
  知識によるイノベーションを成功させるには、まずはじめに、イノベーションに必要とされる知識そのものについて徹底的な分析が必要となる。
・ イノベーションの原理とは何か(P205)
 分析と知識の役割
 体系的なイノベーションはこれら七つの機会の分析からスタートする。七つの機会のいずれが重要かは、時と場所と産業による。
 イノベーションとは、分析的な作業であるとともに、知覚的な作業である。したがって、イノベーションを行う者は、自ら出かけていき、見、聞き、尋ねなければならない。
 イノベーションに成功するためには、左脳と右脳の両方が必要である。数字を見るとともに、人を見なければならない。分析を行うとともに、自ら出かけて行かけていき、ユーザーとなりうる人たちを見、彼らの期待、価値、ニーズを把握しなければならない。
 
 成功の秘訣とは
 イノベーションを成功させるためには、単純であるとともに、焦点を合わさなければならない。一つのことしかしようとしてはならない。
 イノベーションに対する賛辞は、「わかりきったことだ。どうして自分が気がつかなかったのか。まったく簡単なことだ」との言葉である。
 成功するイノベーションは、小さくスタートする。はじめから壮大ではない。具体的なことを一つだけしようとする。
 はじめから大がかりな壮大な試みが成功することはほとんどない。しかし、大きな事業として育つか、ささやかなものに終わるかは予見できないとしても、意図としては、世界の標準となり、先頭を走りうる事業を生み出すものでなければならない。最初からリーダー的な地位を目指すことなく、イノベーションたりうることはない。
 つまるところイノベーションとは、天才のひらめきではなく、仕事である。それは知識を必要とする。創意を必要とする。焦点と必要とする。
 イノベーションには、他のあらゆる仕事と同じように、才能、創意、知識が必要である。しかし、本当に不可欠とされるものは、目的意識を伴う激しい集中的な労働である。勤勉、忍耐、決意が欠けているならば、せっかくの才能、創意、知識も役に立たない。
 実践的にも原理的にも、起業家精神の根幹となるものが体系的イノベーションである。
<抜粋以上>
●イノベーションの七つの機会を全て捉えるのは、実際には難しいが、事業の目的をしっかりと把握し、常に自らが仕掛けて行くことを考えていれば、イノベーションの機会を捉えることか出きる。(漫然と待っていても何も起こらない。)
●山本精工(株)がアルミの切削加工に加えて、昨年、表面処理を始めたのは、まさにイノベーションである。短納期のニーズを更に満足させるという「Bニーズの存在」、切削加工屋が表面処理を手掛けるという「E認識の変化」等のイノベーションの機会を捉えたものと考えられる。
●固定観念からの解放がイノベーションを生むと考えられるが、経営者自身がプラス志向で、自由な発想を持ち、自分自身を起業家として楽しめる状態を創る必要があるのではないだろうか。
●山本精工(株)山本常務の思考パターンは非常に興味があり、是非、分析して、取り入れられるものなら取り入れたい。

 

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